「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」と借金の返済について

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2020年12月29日

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」と借金の返済について

Q自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きを開始した場合、借金の返済はどうなりますか?

A

1 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」手続きの着手と一時停止

 ⑴ 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下、単に「ガイドライン」と言います。)を利用する場合、まずは「主たる債権者」(住宅ローン債務者等、債権額が最大の貸主)に対して、ガイドライン利用に着手することを申し出るところから始まります。

 主たる債権者は、債務者から申し出を受けた場合、10営業日以内にガイドライン利用に同意するか否かを書面により回答しなければなりません。
 ⑵ 無事同意が得られた後は、同意書面を添付して弁護士会等の支援機関にガイドライン利用を申し出ると、登録支援専門家(弁護士等)が選任されます。
 ⑶ 登録支援専門家との協議等を経た後、登録支援専門家は、主たる債権者以外の債権者に対しても、ガイドラインに基づく債務整理を行う旨を申し出ます。
 この申し出があった時点で、「一時停止」が開始することになります。

 

2 一時停止の位置づけ

 一時停止期間中は、各債権者への弁済は中断されます。
 通常、借り入れをする際には、「一度でも返済に遅れた場合には期限の利益を喪失し、その時点で残っている債務全額を直ちに支払わなければならない」旨の条件(期限の利益喪失条項等と呼ばれています)がついていますので、返済をしていないと期限の利益を喪失し、残債務を一括で支払わなければならない状態となります。
 しかし、一時停止の場合には、例外的に期限の利益喪失と扱わないものとされています。
 また、一般的な債務整理を行う場合には、弁護士に依頼をして債務整理を開始する場合には、債権者が通知を受けとった段階でいわゆるブラックリストに載ることになりますが、一時停止の場合にはブラックリストに載せないものとされています。
 ブラックリストに載ることなく債務整理ができるということは、ガイドライン終了後早期に融資を受けられる可能性を残すことができる等のメリットがあります。

 

3 注意点

 上記のとおり、ガイドライン利用の申し出後は一時停止となり、返済を止めていてもブラックリストに載らずに手続きを進められる可能性があります。
 もっとも、実務上は返済を止めている間も新たな利息は発生し続けるものとされています。
 そして、ガイドラインに基づく手続きは、対象債権者すべての同意を得ることが必要となりますが、この同意が得られなくなる等、ガイドラインに基づく債務整理が終了すると、一時停止も終了することになります。
 そうすると、発生していた利息分の返済を求められ、これを支払うことができないとブラックリストに載ってしまう可能性があります。
 そのため、一時停止期間中は、利息分の返済を求められても対応できるよう積み立てておくなど準備しておいた方がよいでしょう。

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