任意整理と「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の違い
1 共通点
任意整理も「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」も,債務の負担を減らすための制度という点では,共通しています。
しかし,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」は,コロナによって債務の返済が困難になった方が利用することを想定している制度のため,次のような違いがあります。
2 対象となる債務の違い
任意整理は,金銭債務であれば,原則としてすべての債務を対象とすることができます。
しかし,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」によって減額できる債務の対象は,時期の観点から以下のものに限定されます。
⑴ 2020年2月1日以前に負担していた債務
⑵ 2020年2月2日から,同年10月30日までに,新型コロナウイルス感染症の影響による,収入や売上げ等の減少に対応するために負担した債務
3 制度を利用するための要件の違い
任意整理は,原則として,制度を利用するための要件はありません。
他方,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用する場合,たとえば以下の要件を満たしている必要があります。
⑴ 新型コロナウイルス感染症に影響により,収入や売上げなどが減少したことによって,債務の返済ができないか,近い将来返済できなくなることが確実と見込まれること
⑵ 弁済について誠実であり,財産状況を債権者に適正に開示していること
⑶ 本制度利用前に,債務の返済が遅れるなど,期限の利益喪失事由に該当する行為がないこと
⑷ 本制度を利用した場合,債権者にとって,破産手続や民事再生手続をした場合と同等以上に債権者が債権を回収できるなど,債権者にとって経済的に合理性が期待できること
⑸ 債務者が事業者の場合,本制度の利用によって,事業の再建が可能であること
⑹ 債務者及び債権者が,反社会的勢力ではないこと
⑺ 浪費など,破産の免責不許可事由がないこと
4 手続の進め方の違い
任意整理は,各債権者と個別に交渉を行うため,裁判所が関与することはありません。
他方,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」は,裁判所で,特定調停という手続きを行います。
つまり,裁判所が関与するか,しないかという違いがあります。
お役立ち情報
(目次)
- 任意整理と「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の違い
- 個人再生と「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の違い
- 自己破産と「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の違い
- コロナウイルスで自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインを用いた場合の手続きと流れ
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を使える条件
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の対象となる債務
- 個人事業者が「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を使った場合の事業への影響
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を使う場合にかかる期間
- コロナウイルスの影響で特定調停する場合の流れ
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を用いた場合に残せる財産
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」と特定調停
- 「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」と「ブラックリスト」
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